こんにちは。
ファイナンシャルプランナー(1級FP技能士)のhanaです。
今回のファイナンシャルプランナー資格講座は相続税の全計算手順を解説します。
計算の流れを知ることは相続・事業承継の分野を攻略するうえでとても大事なことですので、しっかりマスターしましょう。
また、実際に相続が発生した場合にも役立つ内容ですので、FP試験に興味がない方もぜひご覧ください。
国が定める相続税の計算方法については、国税庁のホームページで確認できます。
この記事の監修者 | ||
所属 | ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 | |
氏名 | 大竹麻佐子 | |
専門 | リスク対策、ライフプラン、資産形成 | |
URL | https://fp-yumeplan.com/ |
課税遺産総額を計算する
課税遺産総額とは実際に相続税が課税される金額のことです。
相続税計算の第1段階として課税遺産総額を算出します。
①相続財産を把握する
相続財産には被相続人が遺した預貯金、株式、債券、不動産などの本来の相続財産と死亡退職金や生命保険金などのみなし相続財産(非課税枠が適用できる場合あり)があります。
預貯金・株式・生命保険契約の権利等の評価額を解説しているFP講座です。
自宅敷地など宅地の評価額を解説しているFP講座です。
建物評価と小規模宅地等の特例を解説しているFP講座です。
貸している宅地など借地権等の評価額を解説しているFP講座です。
これらの財産のなかには、相続税の対象とならない非課税財産がある可能性もありますので、一覧表を作り全体を把握することが大切です。
相続税の非課税財産や相続税計算の際、控除できる債務の範囲を説明しているFP講座です。
②相続税の対象となる生前贈与財産がある場合
相続の開始前3年以内(被相続人が亡くなる前の3年間)に被相続人から贈与を受けた財案は、相続税の対象となり、贈与時の価格で計算します。
その他にも死因贈与(被相続人が亡くなることで効力が発生する贈与)や、相続時精算課税制度の適用を受けていた財産がある場合も、その財産は相続税の対象となります。
相続時精算課税制度の説明をしているFP講座です。
ただし、相続開始前3年以内の贈与の場合でも下記①または②に該当する場合は相続税の対象になりません。
①婚姻期間20年以上の夫婦間で不動産の購入や建築資金の贈与について贈与税の配偶者控除の適用を受けていた場合
②直系尊属から「住宅取得等資金」「結婚・子育て資金」「教育資金」のいずれか、または複数の贈与を受けていた一定の要件に該当する子や孫の場合
「住宅取得等資金」「結婚・子育て資金」「教育資金」 の詳しい要件はこちら↓のFP講座で解説しています。
③課税価格を求める
ここまでの段階で相続税の課税価格を算出することができます。
相続税の対象になる財産
・相続または遺贈により取得した財産
・相続開始前3年以内の贈与財産
・死因贈与により取得した財産
・相続時精算課税制度を適用した財産
・非課税枠を超えた生命保険金、死亡退職金
相続税の対象にならないもの
・非課税財産
・控除可能な被相続人の債務
・控除可能な葬儀費用
相続財産の価格から控除可能な債務や葬儀費用を差し引いた金額が課税価格となります。
生前贈与などですでに支払った贈与税は、最後に各相続人の相続税が確定した段階で控除します。
④基礎控除額を差し引く
課税価格から基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を算出します。
相続税には「ここまでは相続税はかからない」という基礎控除があります。
引用:相続税の計算方法(みずほ証券)
基礎控除額
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)=基礎控除額
法定相続人の数は、生命保険金や死亡退職金と同じ考え方です。相続を放棄した法定相続人を含みますので計算時はご注意ください。
例:夫が亡くなり残された家族が妻、子A、子B、子C(相続を放棄)、父の場合の基礎控除額は?
まず、夫の父(直系尊属)は第一順位の子がいるので相続人ではありません。また相続を放棄した子Cも相続人ではありませんが、基礎控除額を計算するときは放棄はなかったものとして法定相続人の数に含めます。
3,000万円+(600万円×4人)=5,400万円(基礎控除額)
各人ごとの相続税額を計算する
相続税計算の第2段階(最終段階)として各相続人の相続税額を計算します。
⑤法定相続分で課税遺産総額を按分する
相続税の算出にあたって、相続税法では、実際に取得する相続人だけでなく、法定相続人が法定相続分で取得したとみなして計算します。
例:子Cが相続放棄し、配偶者、子A、子Bの3人で遺産総額1億4,400万円を相続する場合(課税遺産総額9,000万円)
※遺産総額1億4,400万円ー基礎控除額5,400万円=課税遺産総額9,000万円
配偶者の法定相続分:2分の1
9,000万円×2分の1=4,500万円
子Aの法定相続分:6分の1
9,000万円×6分の1=1,500万円
子Bの法定相続分:6分の1
9,000万円×6分の1=1,500万円
子Cの法定相続分:6分の1
9,000万円×6分の1=1,500万円
⑥法定相続分で計算した価格に税率をかける
相続税の税率
課税対象額1,000万円以下
税率10% 控除額0円
1,000万円を超え3,000万円以下
税率15% 控除額50万円
3,000万円を超え5000万円以下
税率20% 控除額200万円
5,000万円を超え1億円以下
税率30% 控除額700万円
1億円を超え2億円以下
税率40% 控除額1,700万円
2億円を超え3億円以下
税率45% 控除額2,700万円
3億円を超え6億円以下
税率50% 控除額4,200万円
6億円を超える
税率55% 控除額7,200万円
先ほどの配偶者、子A、子B、子Cで計算する
配偶者の相続税額
4,500万円×20%-200万円=700万円
子Aの相続税額
1,500万円×15%-50万円=175万円
子Bの相続税額
1,500万円×15%-50万円=175万円
子Cの相続税額
1,500万円×15%-50万円=175万円
※相続税の総額は700万円+175万円×3=1,225万円となります。
⑦相続税の総額を実際の取得割合で計算する
例:実際の取得割合を、配偶者(70%)、子A(20%)、子B(10%)と仮定して計算
配偶者の相続税額
1,225万円×70%=857万5千円
子Aの相続税額
1,225万円×20%=245万円
子Bの相続税額
1,225万円×10%=122万5千円
⑧相続税額の2割加算の対象者がいる場合は20%上乗せ
相続税額の2割加算とは、相続や遺贈で財産を取得した者が配偶者と一親等の血族である子・父母以外の兄弟姉妹等の場合、相続税額に2割を加算する制度です。
仮に被相続人の兄が相続人として財産を受け取る場合、相続税額が1,000万円であれば、1,000万円×1.2=1,200万円が納めるべき相続税額となります。
⑨各相続人の相続税額から税額控除を差し引く
最後のステップとして各相続人の相続税額から「配偶者の税額の軽減」や「未成年者控除」等、該当していれば控除します。
配偶者の税額の軽減、贈与税額控除など6種類の税額控除を解説しているFP講座です。
⑦で計算した配偶者の相続税額は857万5千円でしたが、配偶者の税額の軽減(1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額までは相続税は課されない)を適用すると、配偶者の相続税額は0円になります。
「配偶者の税額の軽減」が適用される場合でも、相続税の申告書の提出が必要ですのでご注意ください。
<相続税の計算 分かりやすい解説動画>
相続税の計算方法を解説します【初心者向け】
さいごに
今回のFP資格試験講座は相続税の計算手順について解説しました。
相続税の計算は初めて勉強される場合、戸惑われる部分もあると思います。計算手順が多いですし生前贈与の取扱いなど注意すべき事項もありますので。
ただ、最初は慣れないだけで何度か計算問題等にチャレンジしていると次第に把握できるようになりますので大丈夫です。