こんにちは。
ファイナンシャルプランナー(1級FP技能士)のhanaです。
総務省統計局が2021年11月30日に公表した労働力調査で令和3年10月分の「完全失業率」は2.7%でした。
(1)就業者数、雇用者数
就業者数は6659万人。前年同月に比べ35万人の減少。2カ月連続の減少
(2)完全失業者数
完全失業者数は183万人。前年同月に比べ32万人の減少。4カ月連続の減少
(3)完全失業率
完全失業率(季節調整値)は2.7%。前月に比べ0.1ポイント低下
出典:「労働力調査結果」(総務省統計局)
※総務省統計局ホームページより引用
完全失業率は毎月公表される数値ですのでニュースや新聞などで聞いたこと、目にしたことがあるという人も多いのではないでしょうか。
実はこの「完全失業率」ですが、ファイナンシャルプランナーとして活動していると話題にあがることが多々あります。
そのときに気づいたのですが完全失業率を勘違いしている人がわりといらっしゃいました。
例えば完全失業率が3%であれば「全国民の3%が失業している」と思われている人「大学生を除いた18歳以上の国民が対象で、その3%が失業している」と思われている人、なかには「完全失業者=ニート」だと思われているケースもありました。
勘違いの方向は様々でしたが、共通して言えるのはどれも間違っているということです。
そこで、この記事では完全失業率の意味(定義)や計算式、失業率の推移をわかりやすく解説します。
完全失業率の定義
完全失業率とは全国の約4万世帯(10万人程度)を対象に調査した結果、把握することができた「労働力人口」に占める「完全失業者」の割合のことです。
完全失業率の計算式
完全失業者÷労働力人口×100=完全失業率(%)
調査(労働力調査)は毎月、月末1週間にかかる対象者の就業や失業状況を聞き取り調査することで把握しています。
労働力人口とは
労働力人口とは15歳以上(調査月の末日時点)の人口のうち
①働いている人(就業者)
※休業中でも賃金の支払いを受けている、または受ける予定である場合等を含む
②完全失業者
①と②を合計した人口のことです。
労働力人口はあくまでも「15歳以上」が対象ですので
例えば…
僕は8歳だけど新聞配達をいっぱい頑張って家計を支えています!
といった頑張り屋さんでも労働力人口には含まれません。
完全失業者とは
完全失業者とは下記3点のすべてを満たす(すべてに該当している)人のことです。
①調査期間中(月末1週間)に少しも仕事をしなかった(就業者ではない)
②仕事があればすぐ就くことができる
③調査期間中に求職活動や事業をはじめる準備をしていた(過去の求職活動(面接など)の結果を待っている場合を含む)
上記3点のすべてに該当しなければ「完全失業者」とは認められない仕組みになっています。
失業中でも完全失業者に該当しない例
失業中(無職)でも完全失業者に該当しないケースを3つ紹介します。
(例1)
無職です。今後も働くつもりはありませんが、欲しいものがあってたまたま調査期間中は働いたよ
調査期間中に働いているので完全失業者ではありません。
(例2)
現在無職ですが働く意思がありすぐにでも就業できます!
でも、求職活動をしても全滅で…
嫌気がさして調査期間中はずっと寝ていました
調査期間中に求職活動をしていませんし、面接等の結果待ちでもないので完全失業者ではありません。
(例3)
調査期間中?ああ、何もしてないよ。求職活動とか面倒だし、そもそも働きたくないし、はあ…どっかにお金落ちてないかなぁ…
完全失業者の要件②③に該当しませんので完全失業者ではありません。
上記例から「完全失業者」とは要件①②③によって狭めた範囲内(のすべて)に該当する失業者(無職)ということがわかります。
そのため仮に完全失業率が5%であっても実際に失業している人の割合は、ほぼ確実に5%以上と考えられるので、完全失業率から何か(投資や企業経営など)を判断されるさいは一定の注意が必要です。
完全失業率とあわせて押さえておきたい指標
完全失業率とあわせて覚えておきたい指標に「非労働力人口」「労働力人口比率」「就業率」があります。
非労働力人口
15歳以上の人口のうち「就業者」と「完全失業者」以外の人を「非労働力人口」といいます。
一例としてアルバイトなど何もしていない学生、専業主婦(夫)、高齢者など。
労働力人口比率
労働力人口比率とは15歳以上の人口に占める「労働力人口」の割合です。
就業率
就業率とは15歳以上の人口に占める「就業者」の割合です。
完全失業率の推移
完全失業率は国の経済や景気の動向を示す指標の1つとされています。
通常「失業」というのは景気や経済の悪化を受けた結果発生しますので、景気の動きより遅れて動く指標という意味合いで「遅行指数」に分類されています。
1953年(昭和28年)から現在(2021年)までの完全失業率のデータを総務省統計局の長期時系列データで確認したところ開始から長らく1~2%で推移(年度によって変動あり)していた数値が1995年(平成7年)から3%台が定着するようになり徐々に上昇、1998年(平成10年)に4%台に突入、さらに上昇して2002年(平成14年)には5.5%をマークしています。
その後横ばいから減少に転じ3%台まで改善しますが2009年(平成21年)に再び5.5%をつけてそこから緩やかに減少、2021年10月は2.7%でした。
2009年の数値上昇はリーマンショック後の景気悪化の影響ですので完全失業率が「約4万世帯の月末1週間の聞き取り調査」にすぎない点や「完全失業者の定義」を考慮しても、やはり経済景気の動向を示している指標といえます。
数値のすべてを鵜呑みにするのは適切とは思えませんが、一定の注意を払いながら判断指標の1つとして参考にするといいかもしれません。
諸外国との比較に失業率をもちいる場合
完全失業率を諸外国のデータと比較して検討する場合は注意が必要です。
「失業率」に関するデータは米雇用統計など先進国をはじめ多くの国で自国のデータを集計して統計をだしていますが、国によって失業の概念(範囲や対象者など)が異なるケースがほとんどですので、国内外の比較をされる場合は各国の定義に注意しましょう。