FP1級の独学勉強法について解説します。FP1級はファイナンシャルプランナー試験において最上位の難易度に位置づけられる国家資格で、例年の合格率は10%前後。
「FP1級は難しい」「FP1級はすごい」との声もありますが、実際は通学講座を利用せず独学で合格した1級FP技能士さんも多く存在します。この記事では、FP1級独学合格に役立つ内容をまとめました。
- FP1級独学の具体的な勉強法
- FP1級を効率よく勉強するコツ
- FP1級独学におすすめのテキスト、参考書
- FP1級合格に向けた勉強スケジュール(勉強順)
できるだけ費用をかけずにFP1級が勉強できる「FP1級おすすめテキスト」の紹介をはじめ、FP試験対策に役立つ裏技を詳しく紹介します。FP1級の独学勉強、試験攻略にお役立てください。

筆者もFP1級を独学で取得しています。FP1級試験の体験談や現在FP講師として携わるなかで得た情報もお伝えします!
FP1級の試験概要
FP1級試験はFP2級・FP3級試験と違い「学科試験」と「実技試験」が別日に行われます。先に学科試験を受験し、学科試験に合格した人のみがFP1級実技試験の受験資格を得ます。
そのため、FP1級合格を目指すには、まず「学科試験」を攻略する必要があります。またFP1級には、受験資格が設けられており、実務経験の年数等が問われます。
【FP1級・学科試験の受験資格】
- FP2級合格者で1年以上のFP業務(金融機関など)に関する実務経験がある
- FP業務に関して5年以上の実務経験がある
- 厚生労働省認定金融渉外技能審査2級の合格者で、1年以上の実務経験を有する
※CFP認定者など一定の場合学科試験が免除になる規定があります。詳しくは金融財政事情研究会のホームページをご確認ください。
FP1級の難易度※難所は学科試験
FP1級試験は「学科試験」と「実技試験」の両方を攻略しなくてはいけません。学科試験と実技試験のぐお確率を比較すると、学科試験のほうが圧倒的に難しいといえます。
実技試験の合格率が80%~90%の数値であるのに対し、学科試験の合格率は約10%と、10人に1人しか合格に至りません。
※FP1級の実技試験(面接)については、以下の記事で体験談を掲載しています。
FP1級学科試験の合格率は約10%
CFP認定者などに該当しない場合、学科試験を受験する必要がありますがFP1級の試験難易度はやや高めに設定されています。
一例として過去8試験のFP1級学科試験合格率をチェックしてみましょう。
FP1級学科試験日 | 合格率 |
2022年1月試験 | 合格率6.67% |
2021年9月試験 | 合格率13.03% |
2021年5月試験 | 合格率20.05% |
2021年1月試験 | 合格率9.95% |
2020年9月試験 | 合格率15.01% |
2020年1月試験 | 合格率11.81% |
2019年9月試験 | 合格率10.14% |
2019年5月試験 | 合格率11.77% |
FP1級実技試験の合格率は金融財政事情研究会実施の資産相談業務(口頭試問方式)で約85%ですので学科試験攻略が資格取得のカギと言えます。
FP1級学科試験を攻略するには、まず最初に試験の構成を知ることが大切。試験の構成は「基礎編」と「応用編」に分けられます。次項で、FP1級学科の「基礎編」と「応用編」の合格に向けた独学勉強法を解説します。
FP1級学科は基礎編と応用編にわかれている
FP1級学科試験は「基礎編」と「応用編」に分かれます。
基礎編 | 応用編 | |
出題形式 | 四答択一 | 計算、記述 |
回答方法 | マークシート | 筆記 |
出題数 | 50問 | 5題15問 |
試験時間 | 150分 | 150分 |
配点 | 100点 | 100点 |
合格基準は200点満点(基礎編+応用編)で120点以上。6割の問題に正解できれば合格です。
「基礎編」「応用編」といった言葉だけを聞くと、なんとなく応用編のほうが難しいと感じますが、実はFP1級は基礎編のほうが格段に難易度が高く、点が取りにくいです。逆に、応用編のほうが得点しやすい傾向があります。
基礎編は試験傾向が読みづらく、過去問の学習でも試験範囲を外すケースがあるため、幅広い試験範囲をまんべんなく学習し、その名の通り「基礎力」を磨く必要があります。
対してFP1級学科試験の「応用編」は、ある程度、出題の傾向が決まっているため、過去問などで対策しやすく、加点に繋げやすいです。
基礎編で問われる内容と注意点
FP1級学科「基礎編」の四択問題では主に4つの選択肢から「最も適切なもの」または「最も不適切なもの」を選ばせる問題が出題されます。
参照引用:試験問題、基礎編2022年1月試験(金融財政事情研究会 きんざい)
その他にも「正しいものはいくつあるか?」のように数を答える問題もありますが出題割合は少ないです。
試験では50問の四択問題を2時間30分(150分)で解く必要があります。これを単純にわると
- 150分÷50問=3分(1問を解く時間)
- 3分÷4(選択肢の数)=45秒(選択肢1つを判断できる時間)
となります。実際には問題文を読む時間とマークシートに記入する時間が発生しますのでもう少し短いですが、その点を考慮しても150分で四択50問は時間配分的には「イージー」です。
時間が足りない、という事態は起こりにくいですが、受験者のなかには時間切れで問題を解ききれなかった、という人がいらっしゃいます。その理由は下記2点です(基礎編の注意点)
- 計算問題に時間をかけすぎた
- 知らない問題が出題され検討に時間がかかった
上記原因(理由)の対処策として、まず①の計算問題ですが、もしFP試験の序盤で出題されたら後回しにするといいです。
序盤では年金額や金融商品等の利回り計算などが考えられますが、まだまだ試験問題が控えている状態で解こうとすると焦りから余計に時間がかかってしまうことや、ささいなミスをしてしまう可能性があります。
そのため落ち着いて計算問題を解くためにも最後にまわすことをおすすめします。ただし、その場合マークシートの記入欄に注意してください。第何問目を空欄にしているのかはっきりわかるように問題文にチェックを入れておきましょう。
次に②の知らない問題が出題された場合ですが、FP1級はFP試験のなかでは最上位になるので試験問題をつくる人も手によりをかけて(個人の主観です)作成して下さっている可能性が高く難しい選択肢(知らない問題)が含まれているケースがあります。
もし知らない問題が出題された場合ですが「その問いは落としていい(間違えていい)」と割り切るのがおすすめです。
理由はFP試験は60%以上の正解でもれなく合格できる試験制度ですので、難しい問題をどうにかして解くより、簡単な問題(基本的な問題)を確実に得点することがより重要であるからです。
応用編で問われる内容と注意点
応用編では設例5題(各3問の計15問)が出題されます。問題は計算問題と(カッコ)内に適切な語句を記入する問題が多く、それらはすべて記述式となっています。
参照引用:試験問題、応用編2022年1月試験(金融財政事情研究会 きんざい)
記述式ですので四択マークシートのように勘で得点できる可能性は極めて低いですが、問われる内容自体は基礎編より簡単です。
もう少し言えば「応用編」となっているものの問われる内容は「基礎」です。そのため基礎知識の習得が応用編を攻略するカギとなります。
注意点としては計算問題の解答方法は小数点第何位を四捨五入すればいいのか、や○○円未満は切り捨て、など文章を最後まで読んで書き方を間違えないようにしましょう。
FP1級を独学で取得する効果的な勉強方法
FP1級試験を独学で取得するために必要な「テキスト選び」「勉強方法」「学習時間の目安」を解説します。
FP1級のテキスト(参考書)選びのコツ
FP1級学科試験で120点以上を得点するには基本問題を取りこぼさないことが大切ですので、テキスト(参考書)選びはとても重要です。
市販されているテキストには1冊にまとまっているタイプやFP試験6科目それぞれ1冊ずつの計6冊にわかれているものがありますが、独学で受験する場合おすすめは6冊にわかれているテキストです。
1冊タイプもきちんとした構成で要点がまとめられているのですが、FP1級学科試験の「基礎編+応用編」に対応するうえではやや不十分な場合があります。(見直しなどの補助教材として最高です)
要点がまとめられているからこそ、なぜそうなるのか?という疑問からの納得感を抱きにくかったり、計算問題等でも解答の根拠がわかりづらかったりするので分量は増えますが6冊タイプがおすすめです。
FP1級独学勉強用|テキストおすすめ紹介
学科試験おすすめテキスト(参考書)
学科試験おすすめ問題集
FP試験では、法改正があった科目が試験に出題されやすいです。よって、独学勉強に使うテキストは、なるべく新しい出版日のものを使いましょう。「買い直すお金がもったいない」と、昔のテキストのままで勉強を進めると、法改正に対応できず失点につながります。
FP1級を独学で効率的に勉強するコツ
FP2級やFP3級はテキスト(参考書)を補助教材にして問題集を繰り返し解くことが効率的な学習方法でしたが、FP1級の独学はテキスト(参考書)をメインにした勉強がおすすめです。
理由はFP1級試験では問題(選択肢のなか)に知らない項目が含まれていて、試験中に対応できない場合があるためです。
知らない項目はどうあがいてもわからないので判断できなくてかまいませんが、その問題の他の選択肢(基本的な内容)から正解を割り出すことができれば得点はできます。
4つの選択肢すべてが初見の内容となる可能性は非常に低い(最低でも1つ、2つは基本的な内容)のでテキスト(参考書)で基本的な問題に対応できるよう基礎を身につけておくと合格に一歩近づきます。
そしてFP2級やFP3級と違い、FP1級は基本的な問題の範囲が少々広いこともテキスト(参考書)学習をすすめる理由の一つです。
例えばFP3級でも金融資産運用でROE(自己資本利益率)についての出題はありますが、問われても「ROEとは何か?」「ROEの計算式」の2点を知っていれば対応できます。しかしながらFP1級になるとROEの基本は知っている前提で「ROEの三指標分解」「三指標の構成要素」などを問われる可能性があります。
ROEの応用問題というわけではなく、あくまで基本的な内容ではありますが、このように基本(基礎)知識として持っていなければならない範囲が広がるのでテキスト(参考書)をメインにして基礎をたたき込む必要があるのです。
あくまで参考程度ですが、筆者が独学で合格した勉強方法は以下の通りです。
- FP1級のテキスト(参考書)を6冊すべて流し読みして全体の構成を把握する
※流し読みは「疾風の如く」2日程度(8時間未満)で読みました - 各テキストを項目ごとに丁寧に読む(1回目)(約1カ月)
※「暗記してやる」という意識ではなく「内容を理解しよう」という感覚で読みました - テキストを読む(2回目)(約1カ月)
- 購入した問題集を全問解いてみる(約2カ月)
※目的は問題に正解することではなく問題の解説文を読むことでした - テキストを読む(3回目)(約20日)
- 試験と同じ時間(150分+150分)で模擬問題を解く
※試験のペース配分をつかむことが目的でした - 問題集を解いて苦手な項目のみテキストで確認する
- 過去問正解率が100%になるまでひたすら問題集を解く
※⑦⑧の期間は約20日 - 試験日の10日前に最後の仕上げとしてテキストを5日間ほどかけて読む
※もう覚える必要がある項目はない状態でしたので「内容を確認する」目的で読みました - ラスト5日間は問題集をパラパラめくる程度でほとんど勉強せず
- 試験会場へGO
FP1級に独学で合格する勉強時間の目安
独学でFP1級学科試験に合格するための学習時間ですが、筆者の場合で約500時間です。
ただし私はFP3級(約60時間)→FP2級(約100時間)→FP1級(約500時間)と順番に受験していますので2級からは基礎知識がある状態でのスタートになります。
そのためFP2級に合格していて今回1級を受験する人の場合は、この「500時間」という数値はある程度、学習時間の目安になると思います。今回はじめてFP1級を受験(実務経験が5年ある場合等)されるケースでは学習時間の目安が目安にならない可能性が高いので参考程度にされてください。
なお、FP講座の受講生(独学ではない)の平均学習時間で400時間~500時間といったところです。
参考になるかもと思い知り合いのファイナンシャルプランナー(独学合格者)に伺ったところ覚えてない人もいましたが、だいたい300時間~600時間という人が多かったので約500時間という数字はあながち間違ってはいない的を射た数値だと思います。
FP1級の勉強時間は、FP2級の2倍必要だと言われています。
FP2級の場合、勉強時間は平均300時間なので、この2倍の600時間は必要です。
引用:FP1級に合格するための勉強時間はどのくらい?勉強方法は?(フォーサイト)
FP1級に独学で合格する勉強スケジュールの目安
FP1級に独学で合格するための勉強時間が「500時間~600時間」必要だと仮定し、1日に2時間、独学勉強できた場合は、約300日でFP1級に合格できる計算となります。
独学勉強に充てられる時間から逆算した試験日に向け、勉強スケジュールを組んでいきましょう。FP1級の試験日は、おおよそ以下の日程で開催されます。
主催 | 試験月 |
日本FP協会/学科 | – |
日本FP協会/実技 | 9月(年1回) |
きんざい/学科 | 1月・5月・9月(年3回) |
きんざい/実技 | 6月・9~10月・2月(年3回) |
FP1級独学の勉強順
FP1級の試験範囲は広すぎるので「どこから勉強すればいいか分からない」という人も多いです。あくまでも参考例になりますが、当サイトおすすめの勉強順は以下の通り。
- 最初に勉強→タックスプランニング
- 最後に勉強→ライフプランニングと資金計画
- あとの科目は、好みの順番でOK
FP1級学科「基礎編」のうち、タックスプランニング(税金)をいちばん最初に理解しておくと、のちのち学ぶほかの科目の理解が早くなります。
税金関連の知識はほぼすべての分野で関係してくるため、真っ先に取り組んでおくとFP1級独学に有効的です。
逆に、いちばん最初に手を付けないほうがいい科目が「ライフプランニングと資金計画」です。ライフプランニングと資金計画は数字がたくさん出てきますし、内容がややこしいため挫折しやすい分野にあたります。
FP1級の独学合格を目指す場合は、ライフプランニングと資金計画は後回しにして、まずは他の科目から勉強を進めるのがおすすめです。
さいごに
この記事ではFP1級に独学で合格するためのコツを解説しました。
FP資格は2級と3級が人気で受験者も多いです。しかしながらFP1級になると受験者数が減少し、市販のテキストも少なくなります。加えて、資格試験の勉強法などの情報もあまりないため、独学で合格を目指す人にとって大変な一面もある試験となってはいます。
ですが、筆者もそうであったように独学で十分合格できる試験ですので、頑張っていきましょう。