こんにちは。
ファイナンシャルプランナー(1級FP技能士)のhanaです。
今回は↓
今の賃貸住宅をそろそろ出ようと思うんだけど、実はね、床の一部をタバコで焦がしちゃってるのよね。これって退去時にお金を請求されるでしょ。どうにかならないかしら。
こんな悩みを解決します。
原状回復費用をめぐるトラブル
画像参照:PIO-NETに登録された相談件数の推移(国民生活センター)
独立行政法人国民生活センター『PIO-NET』(パイオネット)に寄せられた賃貸アパートやマンションに関する原状回復費用をめぐるトラブル件数は2021年度8,759件(前年同期8,071件)でした。
※相談件数は2021年12月31日現在(消費生活センター等からの経由相談は含まれていません)
トラブル内容の一例
・壁紙やクロス代など高額の原状回復費用を請求された
・不明瞭なハウスクリーニング代
・現状回復費用を大家に相談しても取り合ってもらえない
退去時トラブルになる原因
壁紙やフローリングのキズなどで退去時にトラブルに発展する根本的な原因は賃貸借契約書が大家側に有利につくられているからです。
また、こんな場合もあります。
・賃貸借契約時に原状回復について説明がされていない
・仮に説明があったとしても、原状回復の負担割合や費用の算出方法についての説明は受けていない
・原状回復を請け負った業者の請求金額が相場と比べて高すぎる
原状回復に関する事項は口頭で説明を受けていない場合でも賃貸借契約書には記載されている場合があります。
契約書の「特約」という項目に記載されている可能性が高いので、ぜひ一度確認されてみてください。
特約欄には思いもよらない内容が記載されていることがありますので、賃貸借契約前にしっかり確認して契約することが大切です。
借主が負担する原状回復費用
仮に契約書に原状回復費用はすべて借主の負担と記載があったとしても、その全部を負担する必要はありません。
国土交通省のガイドラインでは原状回復について
賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること
引用:原状回復とは(国土交通省ガイドライン)
と定義づけられています。
この定義によると賃借人の不注意により部屋にカビやシミを発生させた場合や、タバコによる部屋の黄ばみや焦げ跡、釘などで壁に開けてしまった大きめの穴等は借主負担になってしまう可能性があります。
一方、生活していくうえで必然的についてしまった床や畳、クロスの汚れや色落ち等の経年による劣化は貸主負担となる可能性が高いです。
ただしガイドラインは指針であって法的な義務を伴う拘束力はありません。
じゃあ私の場合(タバコの焦げ跡)はお金を請求されるってことね?
確かに借主の負担になる可能性が高いですが、実は無料で修繕する方法があります。
借家人賠償責任保険
タバコの火の不始末(借主の不注意)で床や壁を焼損した場合、貸主に対して損害賠償責任(修復する義務)が発生します。
ですが、そんなときのために借家人賠償責任保険があります。
この保険は単独で加入することもできますが、一般的に賃貸借契約の場合、火災保険に特約として付帯しています。
借家人賠償責任保険の補償範囲
借家人賠償責任保険は借主の不注意による損害のすべてを補償するわけではありません。
補償範囲は火災・破裂・爆発・水ぬれを原因とした損害で貸主に対して法律上の損害賠償責任を負った場合です。
対象となる損害の一例
・タバコの火の不始末やストーブの消し忘れが原因で床や壁を焼損した場合
・風呂やキッチンの蛇口の閉め忘れ、洗濯機のホースの外れ、などが原因で床を水浸しにした場合
「火災・破裂・爆発・水ぬれ」が原因である必要がありますので、例えば部屋の家具を移動させる最中に壁にぶつけてヘコみができた場合は対象外になります。
※保険会社によって補償の対象・内容に違いがありますので、加入保険会社に確認する必要があります。また、借家人賠償責任保険を活用されるさいは事前に貸主にその旨を伝えてから行動するのが望ましいです。
その他の補償
借家人賠償責任保険の対象にならない損害に対して修理費用を補償する保険があります。
修理費用保険とは、火災・破裂・爆発・水ぬれに加えて、落雷・風災・ひょう災・雪災・物体の落下、飛来、衝突等・盗難・デモに伴う破壊による損害に対して貸主に対して法律上の損害賠償責任は負わないが賃貸借契約に基づいて借主が負担した場合にその修理費用を補償してくれる保険です。
賃貸借契約に基づいて修理した場合、または借りている戸室での居住が困難な状態から復旧するために応急修理した場合に負担した修理費用を補償します。
引用:借家人賠償責任補償と修理費用補償の違いはなんですか?(損保ジャパン)
サイト管理人の体験談
ここまで記事を読んで下さった方の中には借家人賠償責任保険は火災や水ぬれが原因でないと補償されないので、この保険だけでは心配な方もいらっしゃったかもしれません。
そこで実務的な話を1つさせていただくと、私は仕事上でアパートやマンションの原状回復をめぐるトラブルを弁護士と共同して3回ですが対応したことがあります。
内容は、結露によるフローリングのいたみ、キッチンの取りきれない油やごれ、故意ではない壁の穴(クギ打ち)の原状回復で、いずれも貸主側(不動産管理会社)から借主が費用の請求を受けて困っているケースでした。
結論を言うとすべて「借主に負担の義務なし」となっています。
ここでお伝えしたいのは、故意(例えば壁にパンチなど)の場合は借主の負担となる可能性が高いですが、人が生活するうえで発生したものは常識的な範囲であれば、まず借主の負担になる可能性はない、ということです。
さいごに
今回の記事では賃貸住宅退去時の原状回復費用をめぐるトラブルについて解説しました。
賃貸退去時にトラブルになってしまうと、「もう面倒くさくなって、泣き寝入りした」という話をよく聞きます。
まずは貸主や不動産管理会社と話し合う必要がありますが、どうしても解決ができない場合は民事調停などの手段も残っています。
大切なお金のことですので、あきらめずに弁護士に相談してみることや、各地の消費生活センターに相談するなど、納得がいくまで戦うことも大事な資産を守る(流出させない)ために必要なことです。
また、賃貸借契約前に退去に伴う原状回復について確認をして納得した上で契約することや入居時に室内の状態を写真などに記録しておくなどの備えもトラブル防止に効果的です。
以上、「賃貸退去時のトラブルを防ぐ方法【退去時費用ゼロにできるかも】」でした。